骨端線と身長の伸びの関連性

骨端線の部位はどこ?骨端成長板が閉じるまでの骨の成長のメカニズム(軟骨性骨化)、成長期の子供の食事の重要性の解説。

★骨端線と身長の伸びの関連性(もくじ)

◆身長の伸びに大きな影響を与える長管骨(大腿骨・脛骨・腓骨)の成長

 骨端線と身長の伸びがどのように関連しているのか?

 スポーツアスリートであれば身長の伸びが実践競技に大きな影響を与える競技も多いことは事実であることから、身長の伸びのメカニズムについて興味がある方も多いのではないだろうか?

 実際に身長が伸びるということは骨の成長、特に下肢にある大腿骨、脛骨、腓骨に代表される「長骨」(長管骨も同意)の成長そのものが身長の伸びに大きく関与している。

 産まれたばかりの赤ちゃんやハイハイを始めたばかりの赤ちゃんは、頭が大きく手足がとても短いのは誰もがご存知だろう。

 特に新生児は身体の4分の3程度を座高が占めており、その手足の短さが逆にとてもかわいらしく感じられる部分でもある。

 しかし幼少期を過ぎ、小学生ともなれば明らかに手足が伸び身体のバランスも少しずつ大人に近づいてくる。

 そして第二次成長期を迎えると、この骨の成長は再度加速し、ほぼ大人の身体とかわらない骨格が形成されるようになってくる。

 この第二次成長期における身体的な外見部分のバランスの変化で最も大きく変化する場所が手足の長さの成長である。

◆骨端線の場所はどこにある?骨の両端部位から骨の成長がはじまるメカニズム

 骨端線は骨の成長を確認する上でも重要な指標となる。

 人体中最も長い骨である大腿骨の場合は、この骨端線の場所が骨の両端部分に確認できる。

 長骨の構造は長骨の中央部分にあたる「骨幹(こっかん)」と、骨の内部の「髄腔(ずいくう)」、そして骨の両端部分にあたる「骨端(こったん)」部分に大きく分類することができる。

骨端線の場所・位置【イラスト図】

 骨端線の場所は長骨の両端部分にある骨幹と骨端の境目部分にあり、成長期の子供の場合は、この骨端線部分に間隔が開いている点が大きなポイントである。

 これは骨端線部分にある組織が成長期の子供の場合は、「骨端軟骨(こったんなんこつ)」と呼ばれる軟骨組織で形成されている為である。※この軟骨組織部分を骨端成長板と呼ぶ

 この骨端軟骨組織は、成長期になると骨の内部で活発に増殖しながら栄養素を取り込んで骨へと少しずつ置換されていく流れとなる。

 その為、長骨の成長とはシンプルにまとめると骨端軟骨が骨へと変化していくメカニズムの事を指す。

 長管骨はこの骨端軟骨が少しずつ骨化することで成長する代表的な骨であり、この軟骨組織が骨化するメカニズムを「軟骨性骨化」と呼ぶ。

◆レントゲン画像に映らない骨端成長版・骨化前の軟骨組織

 成長期終盤を迎えると骨端線部分に確認された骨端軟骨(骨端成長板)は徐々に薄くなり、最終的には完全な骨組織と変換され一本の密度の高い線としてレントゲンに映るようになる。

 これは大人と成長期の子供の骨のレントゲン写真を見ると明らかに確認できる。

 骨端成長板にあたる軟骨部分がレントゲンでは空洞のように見える理由は、この部分が骨組織ではなく軟骨で形成されている為である。

脛骨・腓骨の骨端線【イラスト図】

 骨はレントゲンにくっきりと映るが骨化する前の骨端成長版に見られる軟骨組織はレントゲンに映らない為に、骨端線の隙間が確認されている訳である。

 尚、厳密には、この成長期を終えて骨端軟骨が変換された後に残る線が「骨端線」と呼ばれるもので、成長期の子供の長骨両端部分に現れる線は「骨端軟骨」であり骨端線とは異なるものである。

 その為、骨端軟骨が少なくなると徐々に軟骨組織が骨組織に変異し最終的に骨端線が現れるようになると覚えておくと良いだろう。

◆骨端線離解による骨折症状・損傷しやすい成長期の子供の骨端成長板

 身長の伸びと骨端線の関連性は前述してきたように骨端線部分に見える骨端成長板の幅が大きなポイントとなってくる点は間違いない。

 しかし、成長期の子供の場合は強い外力が加わった際に、この骨端成長板部分の軟骨組織が広がり強い炎症反応と内出血症状を示すケースが多々ある。

 このように、軟骨部分から骨が離れるように発症する怪我を骨端線離解と呼ぶ。

 骨端線離解はまだ骨化されていない軟骨部分に発症する症状であり、成長期の子供に多く見られる骨折症状で肩関節や大腿骨、膝蓋骨、脛骨、腓骨とあらゆる骨端成長板を有する骨に発生する可能性を持つ骨折である。

 この部分が容易に骨折に至る理由は、骨化する前の軟骨組織は硬い組織ではあるものの、弾力性に富み変形しやすい軟骨であることが理由にある。

 骨端成長版を構成する軟骨組織は膠原線維と呼ばれる骨組織を形成する成分に加えコラーゲン組織やムコ多糖の結合組織であるアミノ酸たんぱく質で構成されている。

 骨化した骨組織はカルシウム化合物が沈着しより頑丈な骨構造となるが、たんぱく質成分を多く含有する軟骨組織は弾力性、柔軟性が高く強い外力によって変形したり滑り症状を発症しやすい状態となっている訳である。

 尚、病院の検査では左右のレントゲン撮影を行い骨端線部分の開きを比較することで骨端線離解が発症しているかどうかを確認することができる。

 小学生の中学年程度まではちょっとした捻挫や打撲などでも患部が大きく腫れ上がり骨端線離解を発症する。

 その為、子供を見ている指導者の方は特に成長期の子供は骨端線離解を容易に発症する傾向がある事を把握しておく必要があるだろう。

◆閉じた骨端線が復活する可能性は?

 骨端線と身長の伸びの関わりはここまで解説してように、大きな関連性を持っていることがお解り頂けただろう。

 成長期の骨の成長は、骨の骨端部分にある軟骨組織の増殖によって促進し、この軟骨組織が骨化(軟骨性骨化)する事によって骨そのものが伸びていくというメカニズムが基本にある。

 では、第二次成長期が終わり、骨端部分の軟骨組織がほぼ骨化して閉じてしまった後に骨端線部分の軟骨組織が復活する事はあるのだろうか?

 この点については現代の医学的な見解では、この閉じてしまった骨端線を成長期の状態にまで復活させる方法は存在していない。

 成長期を終え閉じてしまった骨端線を再生させる明確な手法は研究段階にあるという事になる。

 尚、骨端線が完全に閉じている大人であっても骨延長手術を行なうことで骨そのものを伸ばす方法は存在している。

 これは漫画などでも取り上げられている事があり、ご存知の方も多いかと思うが、医療における骨延長手術は既に実績のある分野であるが長期入院が必要となり足の長さが異なるなどの疾患への対応以外では日本で行われることがない手法である。

◆骨はカルシウムの貯蔵庫?様々な働きを持つ骨の役割

 成長期の子供の骨が成長する課程では軟骨性骨化と呼ばれる軟骨組織の骨化現象が起きる。

 この軟骨性骨化が活発に行われている年代の子供達が覚えておくべきポイントは栄養素の重要性である。

 骨といえばカルシウムというイメージがあるように骨はカルシウム化合物とリン酸化合物を主体とした成分で構成される大小200個近い数に及ぶ人体組織の一部である。

 骨は骨格としての内蔵や脳などの重要組織の保護の役割の他、骨格筋との連動による運動作用、そして骨の骨髄で行われる造血作用という需要な役割を担う組織でもある。

 そして、更に骨はカルシウムの貯蔵庫でもある事から、骨には人体内で必要とされる大部分のカルシウム成分が貯蔵されている。

 このカルシウムは日々の生命維持の為に毎日消費されている為、毎日の食事で補給する必要があるが、成長期の子供の場合は、この日々の消費に使われるカルシウム成分だけでなく、軟骨組織が骨化する際に必要となる骨の成長の為に必要となるカルシウム成分もプラスして摂取していく事が求められる。

 またカルシウムだけでなく骨の元となる軟骨組織の主成分であるたんぱく質コラーゲンなどの栄養素も摂取する必要がある。

 ジュニアプロテインが大きな人気を集めたのは、このようにカルシウムやたんぱく質、そしてビタミンなどの複数の不足しがちな栄養素を容易に補えるように配合されている事が原因にある。

 特に成長期の子供はしっかりと食事をとり必要な栄養素を蓄えていく事は部活やクラブなどの運動と合わせてとても重要な仕事となってくる訳である。

◆運動をしている成長期の子供の食事はお母さんの腕の見せ所

 成長期の盛にあるスポーツ選手の場合は特に栄養成分の摂取がいかに重要であるか?という点についてしっかりと学習しておきたい。

 日々の生命維持活動で消費されるカルシウムの摂取はもちろん、骨の成長で消費されるカルシウム。

 そして、更にアスリートの場合は運動によって消費されるカルシウム成分に至るまでの全てを毎日の食事からしっかり補給する必要がある。

 その為、運動をしている成長期の子供の食事はお母さんの腕の見せ所と言う事もできるだろう。

 実際に十分な食事が取れずにカルシウムの補給が間に合わないような場合でも、人体は不足分のカルシウムをカルシウムの貯蔵庫である骨から取り出して補う事ができるため、直ぐに人体が危険にさらされるような事はまずない。

 しかし、骨に貯蔵されているカルシウムを溶かして体内のカルシウム量を補うということは、本来骨の成長に使われるべきカルシウム絶対量が不足する事に繋がり、身長の伸びに悪影響を与える可能性を含んでいる事も把握しておく必要がある。