子供の悩みの種はオスグッド?

10代の子供に多く発症するオスグッド病の解説。

★10代の子供のオスグッドの解説(もくじ)

◆膝の下が痛いよ~!10代の子供の悩みの種はオスグッド?

 スポーツアスリートにとって怪我は最大の敵。

 スポーツを実践中に発症する障害や度重なるトレーニングによる怪我、同じく疲労性を伴ったオーバーユース系の障害を総称してスポーツ障害と呼ぶ。

 今回は、そのスポーツ障害の中でもジュニア期に発生する可能性の高い障害であるオスグッドシュラッターについてチェックしていこう。

◆ジュニア期のスポーツ障害の20%はオスグッドが占める

 オスグッド病は、膝関節に関わる障害としては、ジュニア期に発生するスポーツ障害No1の発症率を誇る障害である。

 厚生労働省におけるデータにおいても、ジュニア期のスポーツ障害のランクには常に上位にオスグッドがいる。

 ジュニア期に発症する全てのスポーツ障害における割合においてもおよそ20%程度がオスグッドであることもあり、聞きなれない名前かもしれないが非常に発生頻度の高い障害であることをまずはチェックしておく必要がある。

 このオスグッド病は、この障害の特徴と原因を解明したオスグットシュラッター氏の名前からそのまま病名として名づけられた疾患である。

 この疾患の特徴は、症状を発症する期間、及び時期がある程度限られている点にある。

◆最も発症しやすい年齢は10歳~14歳の範囲

 オスグッド病が最も発症しやすい年齢は10歳~14歳の範囲。

 これは、この年代に骨が成長する点が上げられているが、スポーツの強度が強くなる時期でもあることから、様々な要因が関与して発症する障害と考えられている。

 年代がある程度限られているのは、脛骨と呼ばれる「すね」の骨の付着面が成長と共にしっかりと安定してくる為。

 成長期には個人差があり、ある程度ばらつきはあるが、やはり第2次成長期のスタート段階から中期までの間にその多くは発症している。

 逆に20歳を過ぎてからオスグットを発症するようなケースはほとんどなく、この成長期独特の障害であることから成長痛と呼ばれることもある。

 オスグット障害を発症した子供は、最初は痛みをこらえて運動を継続するが、そのうち動きに散漫さが確認できるようになってくる。

 自分から訴え出てこない児童も多く、親に相談しても気合で頑張れ!

 などとなってしまうと、頼れる場所もなく、痛みを抱えたまま重度のオスグッド症状まで発展してしまうケースもある。

 その為、この年代の子供を指導している指導者はオスグッドの存在を念頭において注視して観察していくことが求められる。

◆オスグッドのメカニズム

 オスグッド病のメカニズムについて見てみよう。

 オスグッド病は、膝の下部分にかけて痛みを感じることから、非常にわかりやすいスポーツ障害のひとつでもある。

 痛みを発症する部位が膝のすぐ下、もしくは膝のお皿にあたる膝蓋骨全般とその下部に痛みを生じているようなケースでは、年齢によっては真っ先にオスグッドを検討していく。

 膝の下、脛の上部前面に痛みを生じるのは、その部位に炎症が発症している為。

 この炎症が発症している部位は、ちょうど膝蓋靭帯と呼ばれる靭帯が付着している部位であり、この部位に強いストレスがかかることによって炎症を発症しているのである。

 10代前半の子供に多く発症する原因は、この時期はまだ脛骨に靭帯が付着する部位が柔らかい軟骨組織で出来ている為、過度の負荷や繰り返しの牽引に絶えられないことが原因にある。

 その為、負荷が継続して加えられると最初は靭帯の付着部位近辺に炎症が発症し、次第に悪化していく事になる。

 足を軽く引きずるようなしぐさが見えている時は、既に患部に炎症が生じている証である。

◆炎症の緩和とバンドによる制限

 オスグッドの治療について確認しておこう。

 オスグッド病をもし発症してしまった場合は、しばらくの期間は安静を保つことが最重要となる。

 痛みを発症しているような生体反応が確認できる時点では炎症を必ず発症しているので、まずはこの炎症の拡大を防止することが先決。

 痛みが激しい場合は、痛み止めの薬や注射を打って試合に出るようなこともあるが、この時期の子供の場合は、そのような事態にならぬように計画的に調整を行い試合に挑ませることが大切。

 尚、炎症が治まると同時に痛みは確実に引いてくる。

 この回復段階で競技を再開すると再度炎症も復帰してしまうので、復帰にはある程度のプランをもって挑むようにしたい。

 治療期間中に徐々にリハビリを兼ねて再開をスタートする場合は、市販されているオスグッドバンドなどを使用すると良い。

 オスグッドバンドは、膝蓋靭帯の脛骨付着面への牽引を制限する働きがあり、痛みも大きく緩和される。

 当然運動動作にはある程度の制限は加わるが実際に巻いてみるとそれほど制限を感じない。

 むしろ、運動制限<痛みの軽減 と言うほど痛みの緩和には効果がある。

◆復帰期間は10日前後が目安

 競技までの復帰の目安としては、まず1週間程度は完全休養を取り入れ炎症を徹底的に駆除することに努める。

 炎症が収まりだすと子供の場合はすぐに復帰したがるが、この段階では復帰させずに軽いランニングとストレッチに専念させる。

 このストレッチは全身はもちろん特に大腿四頭筋からハムストリングスにかけてしっかりとストレッチを行っておくのがポイント。

 そもそもオスグッドは大腿四頭筋、ハムストリングスの柔軟性が低い点が要因となって発症するスポーツ障害でもある為だ。

 膝蓋靭帯は、脛骨付着面から膝蓋骨を経由して大腿四頭筋に経由する。

 大腿四頭筋は4本の筋頭をもつ巨大な筋肉郡で、この筋郡の収縮によって膝蓋靭帯が牽引され付着部する脛骨が持ち上がる。

 このメカニズムは、椅子に座った状態で確認するとわかりやすい。

 椅子に深く腰掛けた状態で太ももに両手をおきつま先を前に伸ばす。

 この時太ももが盛り上がる動きをするが、これが正しく筋繊維が収縮した証。

 靭帯は伸び縮みしないので、そのまま先端の脛骨が牽引され、膝関節を視点として下腿が持ち上がるという仕組みである。

 この仕組みを考えると四頭筋の柔軟性が高まれば、牽引される際の負荷も軽減されるだろうし、靭帯の炎症も軽減されることに繋がる。

 特に膝下だけでなく、膝頭全体に痛みを感じているような場合では、膝蓋靭帯炎を起こしている可能性もあるので、よりストレッチングの重要性が増してくることになる。

 ストレッチングなどの対策も行い、実際に競技の復帰に入るのは10日以上経過してからがおそらく妥当な範囲。

 もちろん状況にもよるが、過度に安全面を考慮して調整していくと肝心のモチベーションや感覚を失うことにも成りかねない。

 実際、整形外科などの診察を受けていても同様の診断結果となることが多い。