アミノ酸・ペプチドの構造・働き

たんぱく質素材のアミノ酸・ペプチドの構造と働き、9種類の必須アミノ酸・サプリメントの選び方の解説。

★アミノ酸・ペプチドの構造・働き(もくじ)

◆アミノ酸の基礎知識を学ぼう

 筋肉を構成する素材の主力はタンパク質である。
 この蛋白質は幾つかの「アミノ酸」と呼ばれる成分が合成されて構成されている。

 アミノ酸は500種類以上と膨大な数があり何通りもの組み合わせでたんぱく質や細胞を構成している。
 尚、筋肉の原料として使用されているアミノ酸の種類は22種類である。

 アミノ酸は複数の分子がくっつくと「ペプチド」と呼ばれる分子になる。

 ペプチド状まで分離されたプロテインは吸収率が高い。

 このような表現は雑誌などでよく見かける文面である。

 イメージは沸かなくもないが、このような解説を見ていてもなんだか意味がわかりにくいようにも思う。

 今日は、この普段よく耳にするようになってきた「アミノ酸」の基本について学習する。

◆高齢化社会の影響もあってか「アンチエイジング」や「健康食品ブーム」の話題が絶えない

 日本は世界最長の長寿国であることは今では有名な話。
 女性だけでなく男性の平均寿命もとうとう80歳を超えそうなレベルまで来ている。

 このような高齢化社会の影響もあってか「アンチエイジング」「健康食品ブーム」の話題が絶えない。

 深夜にTVをつけ幾つかチャンネルを変えていけば健康ブームに関連する製品のTV通販番組が放送されているのはご存知だろう。

 デジタル放送化されてからはこの波は更に加速しているようにも感じる。

 実際に深夜のデジタル放送の7割以上はこれらの健康ブームにのったサプリメントやダイエットグッズの通販番組ばかり…

 この健康ブームの波はかなり強烈な波である。

 この時代の波にのって改めて注目を集めているのがヒアルロン酸やグルコサミン等のサプリメントと合わせてプロテインなどの大豆製品を中心としたアミノ酸配合製品である。

 今ではシャンプーなどの日用品に至るまでアミノ酸配合と記載されている製品が多く、効果や作用以前にとりあえずアミノ酸という言葉がついていると利点があるように思えてしまう風潮さえ感じる。

◆BCAAもペプチドもタンパク質もみんなアミノ酸の仲間

 健康ブームの中でも健康食品に関する番組などで誰もが耳にするようになった言葉に「アミノ酸」「BCAA」といった言葉がある。

 どちらも一度は耳にしたことがあるはずだ。

 このアミノ酸もBCAAもどちらも実はアミノ酸のことを指している。
 更に言えば筋肉を構成する素材となるタンパク質もペプチドも皆アミノ酸である。

※BCAAもペプチドもタンパク質もアミノ酸

 前述したようにアミノ酸はたんぱく質を合成する最小の単位となる素材であり、アミノ酸から生成されている成分はあまりにも多い。

 「ではこのアミノ酸とはいったい何者なのだろうか?」

 スポーツアスリートであればこのアミノ酸の正体を正しく把握しておくことは後々とっても重要になってくる。
 ではこのアミノ酸の正体と働き、更にスポーツとの関係について見ていこう。

◆アミノ酸はタンパク質を構成する最小単位となる分子

 「アミノ酸とはいったい何者なのか?」

 ここではアミノ酸の正体について見ていこう。

 まず簡潔に結論から言うと、アミノ酸とは「タンパク質」を構成する最小単位となる分子のことを指す。

 単位と言えば何か聞きなれない言葉に感じる方も多いだろう。
 わかりやすく言えば、我々が一般的に使用しているタンパク質という言葉。

 このタンパク質は複数の単体のアミノ酸が合成した成分と捕らえるとわかりやすい。

 この最小単位となるアミノ酸は基本的に単体の場合にアミノ酸と呼ばれるのである。

 尚、幾つかのアミノ酸分子が合成すると、その名前はアミノ酸ではなく独自の分子構造をもつ新しい名称の成分となる。

 少し難しいかもしれないが、アミノ酸は蛋白質成分の「最小単位」であるとここでは覚えておこう。

◆アミノ酸とペプチドの違いって何だろう?

 アミノ酸は蛋白質の最小単位であることは理解できたとする。

 この最小単位を構成するアミノ酸の中にはアミノ酸の代表格ともいえる成分である「バリン」と呼ばれるアミノ酸がある。

 「バリン」「ロイシン」「イソロイシン」と3つのアミノ酸名を聞くと何となく聞き覚えのある方も多いかもしれない。

 このバリンは単体であればアミノ酸。
 しかし、例えば他のアミノ酸とつながると「ペプチド」へと変化する。

 アミノペプチドという言葉を聞いたことがある方もいるだろうが、ペプチドはアミノ酸の複合体。

 尚、分子が2つ以上10個未満でペプチドとなるのもあまり知られていない。

※ペプチドはアミノ酸分子の複合体

 プロテインなどの製品では、ホエイペプチド、大豆ペプチドなどと表記されているケースをよく見かけると思う。

 これらの分類は分子構造によって分類されているのである。

 尚、サプリメントや健康食品ではこれらのアミノ酸成分に加えてビタミンやミネラルなど、幾つかの栄養成分が含有されているものが多い。

◆毎日の食事でも複数のアミノ酸を摂取している

 色々な健康食品にアミノ酸という言葉が記載されているのはなぜだろうか?

 これは全てのアミノ酸単体分子をひっくるめて、「アミノ酸配合」としている為。

 アミノ酸と言えば体に良い成分。

 そんなイメージもある為か、健康食品の多くの製品にはアミノ酸配合!と大きく記載されているものが多い。

 ある意味で宣伝文句のようにもなっているところがある。

 しかし実際はアミノ酸は多くの食品に入っているもので日常生活の毎日の食事でも複数のアミノ酸を我々は摂取している。

 その為、スポーツアスリートがアミノ酸について把握しておくべきポイントは、どのようなアミノ酸を食事から摂取すべきなのか?

 また不足しがちなアミノ酸や食事からしか摂取できない幾つかのアミノ酸成分をどのように摂取していくべきか?という点がポイントとなってくる。

◆アミノ酸はひとつひとつそれぞれ独自の効能や働きをもっており重要な役割を果たしている

 アミノ酸として知られている成分は意外と多い。

 普段何気なく耳にしている「グルタミン」「カルニチン」「アスパラギン酸」や茶の苦味成分である「テアニン」等の成分。

 そしてスポーツアスリートであれば誰もが一度は耳にする「クレアチン」やプロテインパウダー。

 これらもみなもちろんアミノ酸の仲間である。

 アミノ酸として分類されている単体の分子をあげていくと、実に500種類以上のアミノ酸分子が存在することがわかる。

アミノ酸の種類は500種類以上

 これらのアミノ酸はひとつひとつそれぞれ独自の効能や働きをもっており、重要な役割を果たしている。

 その為、アミノ酸の効果を本気で覚えようと思うと、それぞれの働きや効果を学習しなくてはいけない。

 しかしこれだけ多くの成分を全て覚えることだけでも難しい話。

 そこで有名なものやスポーツや運動に大きく関与する注目のアミノ酸をピックアップしていこう。

◆BCAA分岐鎖アミノ酸

 アミノ酸の中でも特にスポーツアスリートに重要なアミノ酸のひとつに、「BCAA」と呼ばれるアミノ酸がある。

 このBCAAとは前述した「バリン」「ロイシン」「イソロイシン」と呼ばれる3つのアミノ酸分子構造をもつ成分。

 この3つのアミノ酸は単体でも効果を発揮するが、3つが合わさるとより重要な効果を発揮するようになる。

 人体への影響としては「筋肉の分解」を抑制する働きがあることが確認されている。

 筋肉細胞は運動を行うとわずかながら筋肉の分解が発生し、BCAAが分離して体液内に流出する。

 BCAAの摂取の目的は、この筋肉の分解がなされる前にBCAAを補給しておくことで分解を抑えようという目的がある。

 特に筋力トレーニングに励んでいるアスリートであれば、せっかく筋トレを行なっても筋肉組織を分解して体内の栄養バランスを整えるようなシステムはありがたくないシステムであると感じるだろう。

 BCAAに関しては現在では幅広い製品が開発されており既に使用中の方も多いかと思うが、このBCAAもまたアミノ酸の一種。

 尚、BCAAはそのアミノ酸の構造上から「分岐鎖アミノ酸」とも呼ばれる。

◆人体内で生成できないが生命活動を続ける為に不可欠なアミノ酸が必須アミノ酸

 人体内で分泌、生成できないアミノ酸であり、かつ人体の生命活動を続ける為に不可欠なアミノ酸を必須アミノ酸と呼ぶ。

 必須という以上、欠かせないたんぱく質であるのは間違いない。
 しかしここにひとつ、面白い仮説がある。

 この仮説とは、必須アミノ酸はタンパク質を構成する上で欠けていても問題ない成分であるという説である。

 必須アミノ酸は様々な食品に含まれており完全に食事からカットすることはまず無理である。

 しかし、人間が生きていく上で本当に必要なアミノ酸であれば、やはり体内で残りの11種類同様体内で分泌生成されていてもおかしくない。

 要は、不要、もしくは食事で十分足りることから合成されないようにヒトが進化したという説である。

 かつて地球上の微生物は酸素があるがために地上での活動ができなかった事は広く知られているが、今では酸素なくしては生きていけないようにシステムが作り替えられている。

 長い生物の歴史の中で、アミノ酸の生成に関しても不要なシステムを切り捨てたという考えもあながち否定できない。

 必須アミノ酸の摂取を完全にカットできない以上、実証することは困難であるが、現在のヒトは必須アミノ酸を食品などから摂取しなくてはいけないことになっている事は事実である。

◆人体内で生成できない必須アミノ酸

 前述した必須アミノ酸の種類は9種類。

 これらのアミノ酸は食品などから摂取するしかなく不足すると様々な弊害をもたらす可能性をもつアミノ酸でもある。

 尚、前述したBCAAも必須アミノ酸に含まれる。

 健康食品ではこの人体で生成できない成分である必須アミノ酸に着目した商品が実に多く製品化されている。

◆必須アミノ酸はバランスが命!どれかひとつが欠けているだけでも十分な効果を発揮しない

 スポーツアスリートにとってアミノ酸の存在は非常に重要であることは理解できただろうか?

 ではここで、人体内で生成できない成分である必須アミノ酸を食品などから摂取する際の注意点について確認しておこう。

 必須アミノ酸はその名の通り、必ず必用なアミノ酸。

 この必須アミノ酸の最大の特徴は、どれかひとつが欠けているだけでも十分な効果を発揮しない。
という性質を持っている点にある。

 簡単に言えば、ひとつの必須アミノ酸が不足するだけで満ち足りている他のアミノ酸の働きも低下するということ。

必須アミノ酸はひとつでも欠けると効果が半減する

 実験データではたった一つ欠けるだけで効果が半減するというものもあるほどだ。
 これはビタミンの法則に似ている部分でもある。

◆健康食品を購入する際は含有成分をチェックする習慣をつけよう!

 アミノ酸単体の製品、例えば「ヒスチジン」「トリプトファン」をサプリメントなどから摂取する場合は、必須アミノ酸のバランスに関しても十分注意が必要である。

 最も理想的な摂取は、単体ではなく9種類のアミノ酸がバランスよく含まれていることが一番の理想。

 実際製品化されているプロテインなどの成分表を見てみると、必須アミノ酸9種類全てを含んでいる製品も多く商品化されている。

 プロテインなどの健康食品を購入する際は全てのアミノ酸が含有されているかくらいはチェックしておきたい。

◆必須アミノ酸9種類はどれも覚えておきたいアミノ酸

 必須アミノ酸9種類はどれも覚えておきたいアミノ酸。

 9種類の中の3つはBCAA分岐鎖アミノ酸。

 最低でも「バリン」「ロイシン」「イソロイシン」の3種類のBCAAだけは覚えておこう。

【BCAA分岐鎖アミノ酸9種】
★バリン
★ロイシン
★イソロイシン
★リジン
★フェニルアラニン
★トレオニン(スレオニンと呼ばれることも)
★メチオニン
★ヒスチジン
★トリプトファン

◆栄養補助食品を選ぶ際にチェックしたい4つのポイント!

 最近のサプリメント市場は若干過熱気味。
 あまりにも聞いたことがない企業が事業を立ち上げすぎている。

 栄養補助食品は実は粗利益の高い分野で新規参入もしやすい人気の市場。

 そして健康食品ブームの影響もあるのだろう。
 正直何でもかんでも「サプリメントにしてしまえば売れる!」そんな印象を受けなくもない。

 また様々な情報が行き交い、大切な部分や問題点を把握していないようにも思う。

☆プロテインは粉末状のものが優れている
☆タブレットタイプのサプリメントは価格が高い

 これらは大きな問題ではない。

 確かにタブレット型に加工すると多少はコストパフォーマンスが落ちるのかもしれない。

 しかし、コストを考えるならアミノ酸やペプチド状にまでタンパク質を分離する方がおそらくコストも時間もかかるだろう。

 尚、参考までに私が栄養補助食品を選択する際は、以下のような点をチェックしている。

①摂取目的と成分含有率

 ごく単純に求めている成分がどれほど含有されているのか?
 自分が求めている効果が期待できる製品であるかどうかは言うまでもなく重要である。
 その目的を果たすための成分がどの程度含有されているのか?といった項目は基本的なチェック項目となる。

 例えば個人的には筋肉を増量したい時期はホエイ系プロテインを主力にたんぱく質に加えて糖質をやや多めにしっかり摂取する。
 逆にシーズン1ヶ月前あたりからの調整期間やしばらく競技から離れており現役復帰を果たす際などは筋肉量を落とさずに体重のみ減量を図りたい為、大豆系プロテインのウエイトダウンを主力に使用する。
 このように明確な目的を設定し、目的に応じて成分を選び使用する製品を選択していく。

※写真:ウエイトダウン

②バランス

 プロテインの場合はBCAA配合であったりビタミン類が配合されているものもある。(合わせて摂取すると吸収率が高まる成分もありそれらの成分が含まれていればありがたい)
 ペプチドやアミノ酸構造であれば吸収率も吸収速度も期待できる。
 配合バランスを確認しながら①の含有量と摂取目的を考慮していくと栄養補助食品のより目的に近い製品の選択が容易になってくる。

③安全性:メーカー・生産地

 栄養補助食品といっても副作用を発症するものもある。ぽっと会社がつぶれるようなメーカーや、問い合わせも出来ないような海外メーカーはやはり避けたいものだ。
 但し日本産というだけで安心できるわけでもない。他国では医薬品扱いのものであっても日本ではまだ医薬品扱いとなっていない成分が非常に多いのも覚えておきたい。
   初めて栄養補助食品の活用を検討している方の場合は、森永製菓の「ウィダー」や明治の「ザバス」などの日本の老舗ブランドから選択していくと安心できるだろう。

④コスト:価格

 最後にコストだが、これもやはり重要。プロテインなど継続して購入する可能性がある場合は当然コスト面もしっかり計算する。
 シーズンオフ期などで筋肉の大きくしておきたい時期などはプロテインやサプリメント類の消費量も多くなるため割安の大容量タイプに一時的にチェンジするなども考慮する。

 以上はあくまで個人的な目安であり過度に神経質になってチェックする必要は全くない。
 慣れてくるとこの4つのポイントは自然とチェックするようになっているだろう。

 尚、自分に見合うメーカーが見つかるまでには時間が多少かかるものである。

◆食品から摂取する習慣を!良く噛めば噛むほど成長ホルモンの分泌が高まってくる

 トップアスリートを見ていると、食事をしっかり取っている選手が多いのがよくわかる。
 「どちらかと言えばちょっと食べすぎかな?」
 と感じるくらいしっかり食べる。

 色物の野菜(緑黄色野菜)も白米も肉類も魚類も自分の口でしっかり良く噛んで食べている。

 当然、しっかりと3食の食事をするとそれなりの栄養素も確保できる。

 これは当たり前のことでもあるのだが、しっかりよく噛む食事をすることはアスリートの人体に大きな影響を与える。
 これは成長ホルモンの分泌の影響だ。

※成長ホルモンは食事を良く噛んで食べることで分泌が活性化する

 良く噛めば噛むほど、この成長ホルモンの分泌は高まってくる。

 成長ホルモンの分泌は女性にとっても重要。
 張りのある肌やアンチエイジング効果、美容効果の基本は成長ホルモンが関与している。

 やはりサプリメントはあくまで栄養補助食品。
 足りない分を補うのが目的であり、基本は食事から摂取する。そして食事はよく噛んで食べる当たり前の習慣を身に着けよう。